皆様の生活には欠かせないエネルギーは電力とガスだと思います。しかし、北海道や東北地方など寒冷な地域に住んでいる場合、灯油も生活に不可欠なエネルギーとなります。
この灯油ですが、主にストーブや給湯ボイラーの燃料として部屋を暖めたり水を温めたりしています。ですが、この灯油、実は液体だと引火しないといわれているんです。どういうことなのか詳しく見ていきましょう。
液体の灯油に火はつかない
どうして液体の灯油は引火しないのか。灯油が揮発した蒸気に火がつくことにより燃焼するからです。火のついたマッチを液体の灯油に落とした場合、灯油に火はつかず、マッチの炎が消える結果となります。(危ないので試すのは控えましょう)
これはマッチの熱が灯油に奪われ、灯油の温度が引火点まで上がる前にマッチの火が消えてしまうからです。マッチが液体の灯油の中に入ることによって、マッチと酸素が遮断され、マッチの火が消えるということになるので、燃えないという現象は起こります。
逆に言えば、灯油の量がすごく少ない場合、マッチの炎をゆっくりと近づけた場合はマッチの熱で引火点を超えてしまい、酸素も遮断されないという現象が起こりえます。必ずしも液体の灯油が火を消せるというわけではないんですね。
このマッチの事例は引火点の説明をするためによく使用されます。「燃えやすいと思われている灯油でさえ引火点の関係で燃えないことがあるんだ」と説明するためです。決して灯油の安全性を保証するためのものではないので注意が必要です。
石油ストーブや給湯ボイラーが点火しない原因に灯油が正しく気化されていない場合があります。
引火点と発火点の違い
では、引火点の説明にしようされると前述しましたが、引火点と発火点は何が違うのでしょうか。
引火点
加熱することで一定の温度まで上がった可燃性物質が、火を近づけたときに燃焼が始まる最低温度のことです。灯油の引火点は40~60度。
発火点
着火源がなくても、高温となった可燃性物質が燃える最低温度のことです。一般的に、発火点は引火点より高くなければなりません。灯油の発火点は255度。
灯油が引火する条件
灯油の引火点は40度で、液温がこれ以上になると可燃性蒸気が発生し、引火することになります。
そのため、灯油が40度以上にならない限り、燃えないということですね。一方でガソリンの引火点はマイナス40度と非常に低く、生活をしている範囲内であれば必ず引火してしまいます。
だからといって灯油を蔑ろに扱って良いというわけではありません。昨今、日本は猛暑に見舞われており40度を超える気温もちらほらと散見されます。夏場でも灯油を保管している家もあるかもしれませんが、その場合は注意を払うようにしましょう。
灯油の正しい保管方法
何度も述べていますが、灯油は危険物です。正しい保管方法を把握しておきましょう。以下でも解説しますが灯油の保管期限と正しい保管方法について解説!灯油を長持ちさせる秘訣もご紹介も併せてごらんください。
高温の場所や火気の近くで保管しない
灯油は引火点が40度以上で加熱などにより引火点以上になると引火の危険性はガソリンとほぼ同じになります。布などの繊維製品などにしみ込んだ状態では、空気に触れる面積が大きくなるので危険性は増大します。
火気の近くで保管・取り扱わないのは当然、直射日光の下、風通しの悪い物置などの高温となる場所では保管しないでください。灯油から揮発した蒸気は空気より重いため、可燃性の蒸気が床面に沿って広範囲に拡大し、穴やくぼ地などに溜まりやすくなります。
そのため離れた場所でも可燃性蒸気が滞留し、火気、高温部、静電気等思わぬ火花などによって引火する危険性があります。
法令に適合した容器を使用して適切に保管
灯油は電気の不良導体(静電気が蓄積し易い液体)であり、貯蔵又は取り扱う容器は消防法令により一定の強度を有するとともに材質により容量が制限されています。そのため、ペットボトルやビン等飲料水用の容器には入れることができないほか、水を保管するポリ容器(ポリ缶)等何でも良いわけでもありません。
灯油の貯蔵又は取り扱いを行う容器については、灯油用として性能試験に合格したポリ缶の使用をお願いします。性能試験に合格した容器には、次のようなマークの表示が付されていますので、容器を購入する際に販売店でしっかり確認してください。
また、容器の劣化に注意し、正しく使用した場合でも5年を目安に更新してください。(ポリ缶には製造年月が表示してあります。)灯油を入れる前に必ず、容器や栓に破損がないか確認しましょう。
また、ストーブへの燃料補給をしていないときは、ノズルやポンプを取り付けたままにしないで、しっかり密栓してください。灯油が入ったポリ缶は積み重ねず、地震による転倒、落下が起きないよう棚等の固定や滑り止めを設置しましょう。
安全に灯油使用機器に入れて使用する
灯油を石油ストーブなどの暖房機器に入れるときは、必ず火を消した状態にし、カートリッジ等を戻すときは蓋が確実に閉まっていることを確認しましょう。直射日光が当たっていたり、高温多湿の場所で保管されていた場合、灯油が変質(燃えにくい成分のタールが発生)している可能性があります。
軽油は「危険物」です
ガソリンや灯油、軽油は、私たちの生活にとってなくてはならない身近なものです。しかし、これらは、消防法上の「危険物」に該当し、文字通り危険な物質として、その貯蔵や取扱いの方法について様々な規制がなされています。
普段何気なく取扱っているこれらの危険物も、一歩貯蔵や取扱いの方法を誤れば、火災や爆発などの甚大な被害を及ぼす可能性があります。ガソリンと比較して安全だ。そう簡単に引火はしない。そう思わないでください。
そのため、灯油を扱う場合は危険物取扱者に合格しなければ扱えないのです。灯油は危険物であるということを忘れないでおきましょう。
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