家庭の光熱費を考える上で、ガスの種類も大切なポイントのひとつです。皆さんは都市ガスとLPガスの違いを正しく把握してますでしょうか。ガス代が高いと感じている方は、まず料金体系を理解することが第一歩です。
都市ガスとLPガスの料金やメリットを比較し、どちらがお得か、それぞれのガスを選ぶ理由を明確に解説します。新築や引越の際には、料金だけでなく安全性や供給の安定性も考慮して、最適な選択をしましょう。
都市ガスとLPガスは何が違うのか
家庭用ガスの種類は、主にLPガスと都市ガスの2つに分けられます。自宅で使っているガスについて考える場合、それぞれの違いを理解することが大切です。
LPガスと都市ガスは、原料や供給方法・同じ体積当たりの発熱量が違います。LPガスのメリット・デメリットや節約方法を知る前に、まずは2種類の家庭用ガスの違いを押さえておきましょう。これらのガスには、大きく分けると以下のような違いがあります。
LPガス | 都市ガス(12A・13A) | |
主な原料 | 原油を原料とする、プロパン・ブタンを主成分に持つ液化石油ガス | メタンを主な成分に持つ天然ガス、液化天然ガス |
原料の特徴 | マイナス約42℃まで冷やすと液体になり、体積が約250分の1になる 同じ体積で都市ガスの2倍以上の熱量を出せる | マイナス約162℃まで冷やすと液体になり、その体積は元の約1/600になる |
供給方法 | 主にボンベに充てんされ、事業者によって配送される | 道路下のガス管を通じて供給する |
質量 | 空気より重い | 空気より軽い |
供給エリア | 全国各地 | 人口が多い都市など |
主成分や重量
都市ガスとLPガスの違いは主に使用されるガスの成分にあります。都市ガスは自然由来の天然ガスから作られ、メタンを主成分としています。メタンは空気より軽いため、漏れが発生した場合は漏れたガスは上昇し、天井付近に滞留するのが特徴です。
対照的に、LPガスはプロパン・ブタンを主成分とする液化石油ガスで、保存や供給は液化形態で行われます。LPガスは空気よりも重く、漏れた際には低い位置に滞留するため、都市ガスとはガス漏れ時の対応が異なることを覚えておきましょう。
供給方法
LPガスはボンベに詰められて各契約者へ配送されます。ボンベに入っているのは液化されたガスです。ボンベの中の液体はボンベから外に出る際に気化してガスになります。ボンベの容積よりはるかに多くの体積のガスが得られるため、可搬性に優れている供給方式なのです。
一方の都市ガスは、地下の導管を通じて各契約者へ供給されます。都市ガスは液化が難しいため、最初から気体のままで供給されています。ボンベで配送するLPガスは全国どこにでも供給できますが、都市ガスを供給できるのは導管が施設されているエリアのみです。
供給エリア
都市ガスは大規模な配管システムを介して供給され、主に都市部やその周辺地域に限定されます。これに対し、LPガスは個別のボンベを用いて各家庭に直接供給されるため、全国どこでも使用が可能です。配管の敷設が困難な郊外や高低差のある地域、島しょ部等でも広く利用されています。
一方、都市ガスの場合は、道路下のガス管を通じて供給されるため、配管が敷設されていないエリアでは利用できません。そのため、供給エリアは人口が密集する都市部に限られます。
このように、都市ガスとLPガスは成分の違いや供給方法、利用可能なエリアにおいて大きな差があり、消費者のライフスタイルや住環境によって適した選択が異なります。
同じ体積あたりの発熱量
LPガスと都市ガスは、同じ体積あたりの発熱量も違います。LPガスが発する熱量(カロリー)は、同じ体積の都市ガスの2倍以上です。同じ体積でお湯を沸かすなら、都市ガスを使って10分でお湯が沸く場合、LPガスを使えば5分以内にお湯を沸かせる計算になります。
ただし、実際のガス器具はLPガスと都市ガスのどちらを使っても、お湯が沸くまでの時間はほとんど変わりません。それぞれのガス器具で同等の熱量が出力されるようにガス量を設計されているためです。
都市ガスよりLPガスのほうが火力が大きいと思われがちですが、同じガス器具ならどちらも火力は同じです。
LPガスの特徴
都市ガス・LPガスそれぞれの特徴について解説します。
LPガスのメリット
LPガスには、以下の様なメリットがあります。
どこでも使える
LPガスは圧縮・液化し容器に充てんして運ぶことが可能で、都市ガス配管が整備されていない地域や離島でも供給できます。大規模配管が敷設困難な地域でも簡単に使用することができるため、可搬性が高いことが特徴になります。
お祭りの屋台で火器を使用する場合、そのほとんどがLPガスになっています。カセットコンロに使用するボンベもLPガスです。これに対して、都市ガスはマイナス162℃でなければ液化できず、地下のガス導管を通じての気体のままでの供給が基本となります。
初期費用を抑えやすい
LPガスは都市ガスに比べて導入時の初期費用が低く抑えられます。設備投資が少なく、主にガスボンベと接続設備だけで済むため、新築やリフォーム時にもコストを抑えやすい特徴があります。
災害に強い
LPガスは建物ごとに独立した供給システムを有しているため、大規模な災害が発生しても供給が途切れにくいという大きなメリットがあります。地震や津波の際にも、都市ガスのように供給網が破壊されるリスクが低く、災害による復旧も速やかに行える利点があります。
一方の都市ガスは、災害時の復旧が遅くなる恐れがあります。都市ガスは水道と同じく導管でつながっているため、ある家だけ見れば問題がなくても、どこかで問題が発生していれば地域全体の復旧ができません。
災害時に強いというLPガスのメリットを考慮し、避難所になる施設は、都市ガス圏内にある場合もLPガスの利用が推奨されています。また、可搬性に優れているLPガスを避難所や仮設住宅に設置すれば、煮炊きや暖房などの生活支援でも活躍します。
プロパンガスは災害に強い、防災意識の高いエネルギーです【LPガスのメリット】
二酸化炭素の排出量が少ない
LPガスは燃焼時の二酸化炭素の排出量が少ないため、地球温暖化への影響が他の化石燃料や、火力発電所中心の日本の電力よりも低いとされています。二酸化炭素は、地球温暖化の原因の一つとされています。環境に優しいLPガスの使用は、脱炭素社会への取り組みとして注目されています。
LPガスのデメリット
LPガスの使用にもいくつかのデメリットがあります。主な問題点は、料金の高さと料金体系の不透明性です。詳しく見ていきましょう。
都市ガスより料金が高い
LPガスの大きなデメリットは、都市ガスと比較して料金が高いことです。そもそも原料が異なることに加え、LPガスにはボンベの配送という逃れられないコストがあるためです。
また、LPガスは個々の供給業者が価格を設定することもあり、地域や業者によって料金が大きく差があることがあります。これらにより、同じ熱量で消費しても、LPガス利用者は都市ガス利用者よりも費用が高いという傾向にあります。
料金が不透明
LPガスの料金が都市ガスより高い理由は、同じ燃える気体であるというだけで、まったく違うものだからです。LPガスはアメリカや中東から輸入するプロパンなどの石油系ガス、都市ガスはオーストラリアやロシアから輸入する天然ガス(メタンなど)であるため、輸入価格から違いがあります。
都市ガスよりLPガスのほうが供給コストが高いことも、料金差が発生する理由の1つです。LPガスはボンベで各契約者に供給されるため、都市ガスでは発生しない人件費や配送費がかかり、その分の料金が上乗せされています。
LPガスの料金体系は長らく不透明な部分が多く、消費者にとっては理解しにくい状況でした。料金は「基本料金+従量単価×使用量」で計算されますが、基本料金や従量単価は各ガス会社にてそれぞれ設定されています(自由料金)。
これらが不明瞭であるがゆえに事業者ごとの高い・安いの違いもわかりにくく、価格面での競争が起こりにくいことが問題とされてきましたが、2024年4月の液化石油ガス法の改正省令により、LPガスの料金表示の義務がより透明性を増すこととなりました。 こういった取り組みにより競争が促されることで、LPガスの料金も低廉化されることが期待されています。
都市ガスの特徴
続いて、都市ガスの特徴について解説します。メリットとデメリットそれぞれの観点から見ていきましょう。
都市ガスのメリット
都市ガスがなぜ多くの家庭に選ばれるのか、そのメリットを料金、環境負荷、そして設置の必要性の点から詳しく説明します。
料金が安い
都市ガスはLPガスに比べて、供給コストが低いため料金も安く設定されています。都市ガスは地下の導管を通じて直接供給されるため、ボンベを個別に運ぶ必要がなく、これが主なコスト削減の要因です。
また、2017年のガス小売全面自由化により、都市ガスの料金制度がLPガス同様自由化され、消費者が異なるガス会社から自由に選択できるようになりました。
これにより、消費者は自分のニーズに合った最適な小売事業者、料金プランを自由に選べるようになり、競争が促された結果、料金がさらに低く抑えられることが期待されています。
環境負荷が低い
環境面でのメリットも大きいです。都市ガスは天然ガスが主成分で、燃焼時の二酸化炭素排出量が少なく、地球温暖化への影響が低いです。
また、LPガス同様、精製された都市ガスは硫黄酸化物や窒素酸化物の排出もほぼなく、大気汚染を引き起こしにくいため、環境に優しいエネルギー源として評価されています。
設置スペースが不要
都市ガスのもう一つの利点は、家庭など利用場所での設置にスペースがほとんどまたは全く不要であることです。LPガスがボンベ等の設置を必要とするのに対し、都市ガスは地下の配管を通じて直接供給されるため、敷地内の限られた空間を最大限に活用できます。
都市ガスのデメリット
続いて、都市ガスのデメリットについて解説します。
災害に弱い
都市ガスの主要な弱点は、災害時のリスクです。主に都市部で使用される都市ガスは、大規模な地震や台風などの自然災害が発生すると、供給管の損傷リスクが高まります。損傷した管からのガス漏れは火災や爆発の直接的な原因となるため、災害発生時にはすぐにその供給網のガス供給を停止し、安全確認を行う必要があります。
広範囲にわたる検査が必要なため、復旧作業には時間がかかります。これにより、都市ガスユーザーは長期間にわたってガスが使えない状況に直面することがあります。このため、学校など地域の避難場所などでは、都市ガス敷設地域であってもLPガスが採用されていることが多くあります。
対応するエリアが狭い
都市ガスのもう一つのデメリットは、利用可能なエリアが限定されている点です。都市ガスのインフラは高コストで、その設置には広範囲の配管と維持管理が必要です。
このため、人口密度が高い都市部に限定されており、地方や人口が少ない地域では導入が経済的に不可能です。都市ガスの普及エリアは国土面積の約6%にとどまるとされており、多くの地域では都市ガスを利用する選択肢がなく、LPガスが使われることが一般的です。
都市ガスとLPガスがおすすめの人
都市ガスとLPガスが、どのような人におすすめなのかをそれぞれ特徴とともに解説します。
都市ガスがおすすめの人
都市ガスは、都市部やその周辺地域において広範囲に敷設されたパイプラインを通じて供給されるガスです。この広範な配管ネットワークのおかげで、都市部に住む人々は容易に都市ガスを利用することができます。
また、都市ガスはLPガスと比較してランニングコストが低いため、ガスを日常的に多用する家庭にとっては、より経済的な選択肢となります。さらに、都市ガスの主成分はメタンであり、その比重が空気よりも軽いため、もしガス漏れが発生しても漏れだしたガスは上昇し、散逸しやすい性質があります。
このように、都市ガスは都市部に住む人々にとって信頼性の高いエネルギー源と言えます。
LPガスがおすすめの人
LPガスは、特に都市ガスの供給網が届かない郊外や分散型住宅地に住む人、イニシャルコストを抑えたい人に最適な選択肢です。
ボンベを使用して供給されるため、設置場所に制限が少ないことが特徴です。これは、都市部から離れた地域や、自由度を重視する世帯に特に便利です。また、都市ガスのように新築時に大掛かりな導管の引込工事が必要なく、イニシャルコストを抑えて利用することができます。
例えば、給湯や暖房に電気や灯油といった他のエネルギーを使う場合など、ガス消費が少ない設備を備えた家では、そもそもガスにおけるランニングコストが低いため、イニシャルコストが低いLPガスを選択肢とするのもよいでしょう。
また、LPガスは災害時にも強みを発揮します。都市ガスは広範囲のパイプラインシステムに依存しているため、影響範囲全体で問題が解決しない限り、供給再開が遅れることがあります。
これに対し、LPガスは個別のタンクを使用しているため、一戸ごとに安全確認が行え、被害が小さければ迅速にガスの供給を再開できます。
集合住宅の場合はガスの種類を変更できない
マンション・アパートなど集合物件においては、ガスは物件ごとに設備されており、ガスの種類を入居者ごとに変更することはできません。
したがって、新しい住まいを選ぶ際には、事前に物件で使用されているガスのタイプを確認することが非常に重要です。異なるタイプのガスを使用している物件に引っ越すことになると、互換性の問題からガスコンロの買い替え、または専門家による部品交換等が必要になりますので、この点は特に注意が必要です。
また、戸建ての賃貸物件の場合、都市ガスの引き込み工事をしたり、都市ガスをやめボンベを設置したりすることを家主が許可することもあるかもしれませんが、このような改修は非常にコストがかかります。
工事の許可が下りたとしても、高額な初期投資が必要であるため、その利便性やコストパフォーマンスをよく考えた上で決定することが求められます。
ガスの違いを知ってガス料金を抑えよう
都市ガスとLPガスには異なる特徴があります。ガスのタイプを選択する際には、それぞれの特徴を把握し、ご自身の家庭にあったガスを選ぶことが重要です。賃貸などの場合、基本的にはガスの種類を変更できない点は注意しましょう。あらかじめガスの種類を把握してから、入居先を決める必要があります。
戸建て住宅にお住まいの方でもLPガスだからと言って諦めないでください。上記でも述べた通り、料金が不透明だからこそ誠実なLPガス会社が埋もれる状態となっております。きちんと専門家を交えてLPガスの見直しを図ってみませんか?
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